多くの投資家が新NISAで将来の資産形成を急いでいますが、意外と盲点なのが「自身の死後」の取り扱いです。
せっかく非課税で運用していても、保有者が亡くなった瞬間にその魔法は解けてしまいます。
結論から申し上げますと、NISAの非課税枠をそのまま家族が引き継ぐことは不可能です!
配偶者であっても、亡くなった方のNISA口座を自分のNISA口座として合流させることはできません。
税務上のルールでは、死亡日をもって非課税期間は終了したものとみなされます。
そして、その資産は一旦「特定口座(課税口座)」へと払い出され、そこから相続人の口座へと移されるというプロセスを辿ることになるのです。
では、相続財産としての価値はどのように決まるのでしょうか?
投資信託の場合は非常にシンプルです。
保有者が亡くなった当日の「基準価額」に保有口数を掛け合わせた金額が、そのまま相続財産の評価額となります。
これは翌日に公表される価格で確定するため、迷う余地はありません。
一方で、上場株式やETF(上場投資信託)の場合は、少し特殊な計算ルールが存在します。

死亡当日の終値だけでなく、「当月の終値平均」「前月の終値平均」「前々月の終値平均」の4つを比較し、最も低い価格を評価額として採用できるのです!
これは、急激な相場変動によって相続税負担が不当に重くなるのを防ぐための救済措置といえます。
賢い相続対策としては、この4つの中で最も有利な(低い)価格を選択することが鉄則となります。
実際に相続が発生した場合の具体的な手順は以下の通りです。
まず①、亡くなった方がどの金融機関でNISA口座を開設していたかを特定してください。
次に②、相続を受ける家族は、その同じ金融機関に自分名義の「特定口座」を開設しなければなりません。
別の証券会社への直接移管はできないため、この「同じ金融機関に口座を持つ」という点が最大のハードルとなります。
そして③、金融機関から「相続上場株式等移管依頼書」という書類を取り寄せ、必要事項を記入して提出します。
これにより、ようやく資産が家族の口座へと移されます。
投資に不慣れな高齢の配偶者にとって、この口座開設から移管までの事務手続きは、想像以上に精神的な負担となるでしょう。
もし、残された家族に投資の知識が全くない場合はどうすべきでしょうか?

一つの選択肢として、生前に売却して現金化しておくという方法もあります。
しかし、死期を悟ることは難しく、健康なうちから運用を止めるのは機会損失にも繋がります。
そのため、認知症リスクが高まる年齢に達した段階で、徐々に現金比率を高めるなどの緩やかな対策が推奨されます。
英国のISA制度では配偶者への非課税枠の引き継ぎが可能ですが、残念ながら現在の日本の法律ではそれは「夢物語」に過ぎません。
日本の金融行政の現状を鑑みると、近い将来にこのルールが緩和される可能性は極めて低いと言わざるを得ないでしょう。
だからこそ、今からできる最善の策は「遺言書」の作成です。
誰がどの資産を引き継ぐのかを明確にし、家族間での争いや手続きの迷いを未然に防ぐことが、一流の投資家としての最後の仕事と言えるかもしれません。
資産形成だけでなく、出口戦略としての「守り」も固めておきましょう。
最終的に、特定口座に移管された資産をどう運用するかは相続人の自由です。
そのまま売却して納税資金に充てることもできますし、改めて自分のNISA枠を使って買い直すことも可能です。
制度の限界を正しく理解し、家族に負担をかけない準備を今日から始めてください。


