現代の日本において、医療費の増大は避けて通れない深刻な課題です。
2023年度の医療費総額は約48兆円に達し、その約6割を65歳以上が占める現状があります。
政府はこの財源を確保するため、資産に余裕がある層、すなわち金融所得を持つ層からの社会保険料徴収を強化する方針を打ち出しました。
これまでは、株式投資などで「特定口座(源泉徴収あり)」を選択し、確定申告を行わない「申告不要制度」を利用すれば、金融所得が社会保険料の算定に含まれないという、いわば「抜け道」が存在していました。
しかし、この仕組みが大きな転換点を迎えています。
厚生労働省の検討によれば、金融機関に対して「法定調書」の税務署へのデータ提出を義務化し、マイナンバーを活用して個人の金融所得を完全に把握する仕組みが構築されます。
これにより、確定申告の有無に関わらず、配当金や売却益が自動的に保険料に反映されることになります。
具体的にどの程度の負担増になるのでしょうか?

モデルケースとして、年金収入に加え50万円の配当収入がある後期高齢者の場合、年間で国民健康保険料が約5万円、介護保険料が約1.5万円、合計で6.6万円以上の負担増となる可能性があります。
これは、手間をかけて確定申告をしている人と、あえて申告を避けている人の間の不公平を是正するという名目のもとで行われます。
この改正はまず75歳以上の後期高齢者をターゲットとしていますが、油断はできません。
国民健康保険制度の性質上、将来的には自営業者やフリーランス、そして早期リタイアした現役世代にも適用範囲が拡大されることが容易に予想されます。
では、我々にはどのような対策が残されているのでしょうか?
まず第一に検討すべきは、NISAの徹底的な活用です。
NISA口座内での運用益や配当は、税務上も社会保険料の算定上も非課税として扱われます。

以下の手順で資産の最適化を図ることを強く推奨します。
① 現在の特定口座における保有資産を把握し、含み益の状況を確認する。
② 毎年のNISA投資枠(成長投資枠・つみたて投資枠)を優先的に埋めるよう、特定口座から資金を順次移動させる。
③ 高配当株などのインカムゲインを目的とした投資は、可能な限りNISA枠内に収めることで、将来の保険料上昇リスクを遮断する。
また、上級者向けの対策として「マイクロ法人」の活用も挙げられますが、役員報酬の設定次第では逆に保険料負担が増えるリスクもあり、慎重な検討が必要です。
この改正が実際に運用されるのは、早くとも2030年、あるいは2031年以降の見通しですが、準備を始めるのに早すぎることはありません。
投資家にとっては「手取り額」が減少する厳しい時代が到来します。
国の制度変更を正確に捉え、NISAという唯一の公的な逃げ道を最大限に利用することが、賢明な資産防衛の第一歩となるでしょう。


