現在、日本の所得税は「超過累進税率」を採用しており、給与や事業所得などの総合課税対象は、稼げば稼ぐほど最高55%(住民税含む)まで税率が上がります。
しかし、株式の売却益や配当金などの「金融所得」については、一律20.315%(所得税15.315%、住民税5%)という分離課税が適用されています。
この税率差が、いわゆる「1億円の壁」問題を生み出しています。
財務省のデータによれば、所得が1億円を超えると、所得に占める金融所得の割合が増えるため、逆に実質的な税負担率が下がっていくという逆転現象が起きています。
この不公平感を是正するため、2025年(令和7年)から「極めて高い水準の所得に対する負担の適正化」として、金融所得課税の強化がスタートします。
具体的な計算式は、(①合計所得金額等 - ②特別控除3.3億円) × 22.5% となります。
この計算結果が、通常の所得税額を超える場合に、その差額が追加で課税される仕組みです。

ここで重要なのは、新NISA(少額投資非課税制度)などの非課税所得は、この合計所得の計算には含まれないという点です。
2025年からの新制度における具体的なシミュレーションを確認しましょう。
例えば、株式投資のみで年間5億円の所得がある人の場合、従来の所得税(15%)は7500万円です。
新方式では、(5億円 - 3.3億円) × 22.5% = 3825万円となり、従来額の方が多いため追加徴税はありません。
しかし、所得が10億円の場合、従来額は1.5億円ですが、新方式では約1.5075億円となり、差額の75万円を追加で納税する必要があります。
試算では、この対象となるのは日本全国でわずか200〜300人程度、所得水準で言えば30億円を超えるような超富裕層に限定されます。
しかし、プロの視点から見れば、これは「増税の布石」に他なりません。

政府はNISAという「誰でも使える強力な非課税枠」を提供した一方で、それ以外の特定口座等での投資に対しては、課税を強化しやすい環境を整えています。
現在は3.3億円という高い足切りラインも、将来的に1億円、5000万円と引き下げられるリスクは十分にあります。
また、税率自体が22.5%から30%へと引き上げられる議論や、確定申告不要制度を選択しても国民健康保険料の算定に影響させる案も浮上しています。
今後のアクションプランとしては、まず新NISA枠を最優先で埋めることが鉄則です。
また、法改正の動向を注視し、金融所得課税が「総合課税化」されるリスクに備える必要があります。
今回の改正は一部の富裕層向けに見えますが、国家財政の現状を鑑みれば、あらゆる増税が「まずは上から、徐々に下へ」と波及してくるのが歴史の常です。
投資家は単に運用益を追うだけでなく、税制というルールの変化に対し、常に理論武装をしておくことが求められます。


