退職金の受給を目前に控えた50代・60代にとって、その資金をいかに運用するかは極めて重要な関心事です。
しかし、具体的な計画なしに全額を投資へ投じることは、老後の安定を揺るがす大きなリスクを伴います。
本稿では、マネーセンスカレッジのサ司氏が提唱する、投資を始める前に必ず実行すべき「5つの確認項目」を解説します。
老後資金の不安を解消する鍵は、増やすことよりも先に「いくら残すべきか」を可視化することにあります。
第一のステップは、100歳までの「収入」を正確に把握することです。
人生100年時代を見据え、公的年金、個人年金、企業年金など、定期的に入ってくるキャッシュフローをすべて洗い出します。
ここで注意すべきは、公的年金の受給額です。
ねんきんネットで試算できる金額はあくまで額面であり、将来のマクロ経済スライドによる目減りや、税金・社会保険料の負担を考慮しなければなりません。
具体的な計算式として、ねんきんネットの試算額に0.72を掛ける方法が推奨されています。
これにより、実際に生活に使える「手取り額」を現実的な数字として算出することが可能になります。
投資を検討する前にやるべきことは何でしょうか?それは、5つの項目による現状把握です。
第二のステップは「支出」の把握です。
現在の生活レベルを基準に、老後の世帯人数に合わせた調整を行います。

ここで用いられるのが、世帯人数の平方根(ルート)を用いた計算手法です。
具体的な手順は以下の通りです。
①現在の生活費(貯蓄・投資分を除く)を把握する。
②現在の世帯人数が3人で、老後が1人になる場合、現在の支出を√3(約1.73)で割り、1人分を算出する。
③老後が2人になる場合は、算出した1人分に√2(約1.41)を掛け、夫婦2人の支出を導き出す。
第三のステップは「不測の事態への備え」です。
急な出費に対応するための「生活防衛資金」として、1人あたり100万円を目安に確保します。
さらに、医療費と介護費として、1人あたり計1000万円を別途見積もる必要があります。
医療・介護費の備えは、将来的な制度改正や負担増のリスクに対するバッファとなります。
夫婦であれば2000万円という数字が重くのしかかりますが、互いのサポートを考慮しつつ、まずは1000万円をベースに検討することが現実的です。
第四のステップは「1年を超える支出」の書き出しです。
車の買い替え、家のリフォーム、海外旅行など、毎月の家計には含まれない大きな支出をリストアップします。

これらが不明確な場合は、平均的な家庭で約1000万円程度を予算として見込んでおくと良いでしょう。
自身の夢や希望するライフスタイルを具体的に数字に落とし込む作業が、健全な投資判断の土台となります。
最後のステップは「リタイア時の資産額」の整理です。
預貯金、終身保険、NISA、iDeCo、そして退職金の見込み額をすべて書き出します。
これらを運用する場合は、堅実な利回りを設定して将来価値を試算します。
以上の5項目を突き合わせた結果、多くの人が直面するのが「老後資金の不足」という現実です。
しかし、この「絶望」こそが正しいファイナンシャルプランの出発点となります。
数字で現状を直視すれば、支出の削減、就労期間の延長、あるいは投資戦略の再考といった具体的な対策を打つことができます。
不安の正体は「未知」であることです。
まずは計算を完了させましょう!
退職金を投資に回すのは、これらすべての計算を終え、投資に回してよい「余剰資金」が明確になってからでも遅くはありません。
確かな数字に基づいた、後悔のない老後設計を目指してください。


