現在、日本の株式市場は歴史的な「大相場」の局面にあります。
Kioxia(キオクシア)の売買代金が1.6兆円を記録するなど、かつてない規模でマネーが動き始めています。
この背景にあるのは、世界的なマネーの価値下落と、日本が直面している「悪のインフレ」です。
かつてのバブル期は円高を伴う「良いインフレ」でしたが、現在は円安と物価高が同時に進む過酷な状況にあります。
この局面では、現金をただ持っているだけで資産が目減りしていくという現実を直視しなければなりません。
特筆すべき変化は、日本企業の行動変容です。
長年積み上げられてきた法人預金が、直近で約4.5%減少しました。
これは、企業が「現金を置いておくリスク」を認識し、設備投資や自社株買いへと資金を振り向け始めたことを意味します。
これまで日本企業は、万が一のために現金を溜め込む経営を続けてきましたが、インフレによる実質的な価値の毀損を防ぐため、ついに「重い腰」を上げたのです。
この企業マネーの流動化が、株式市場を下支えする強力な要因となっています。

投資家が注目すべき銘柄の選別基準として、経済アナリストの朝倉 慶(経済アナリスト)氏は「価格転嫁力」を挙げます。
原材料費や人件費の高騰分を、躊躇なく製品やサービスの価格に反映できる企業が、この時代を生き残ります。
例えば、McDonald's(マクドナルド)は戦略的に値上げを行い、収益を維持しています。
一方で、サイゼリヤ(Saizeriya)や任天堂(Nintendo)のように、消費者への配慮から値上げを遅らせる企業は、短期的には投資家から「利益を削っている」とネガティブに評価されるリスクがあるのです。
今後の市場展開について、田端信太郎(アクティビスト投資家)氏は、インフレによる格差の拡大を指摘します。
ブランド力の強い企業にお客が集中し、安さだけで勝負していた企業が淘汰される「残酷な選別」が始まります。
現在は、海外投資家の資金によって東京エレクトロン(Tokyo Electron)やアドバンテスト(Advantest)といった大型株が先行して買われていますが、今後は個人の資金も流入せざるを得ません。
なぜなら、年間3%のインフレが続けば、1,000兆円を超える個人の現預金は、年間30兆円以上の価値を失い続けるからです。
個人投資家が次に狙うべきは、これまで見過ごされてきた「割安株(バリュー株)」です。
特にJASDAQ(ジャスダック)市場などに眠る、PBR(株価純資産倍率)が低く、配当利回りが高い銘柄に注目が集まるでしょう。

これまでは「上がらない株」として放置されてきた銘柄も、市場全体にお金が回り始めれば、必ずその割安さが評価されるタイミングが訪れます。
企業の体質が健全であり、かつ配当を維持している銘柄を仕込んでおくことが、インフレ対策として有効な手段となります。
政治的な側面から見ると、現在の物価高対策としての補助金(ガソリン補助金など)は、対症療法に過ぎません。
これは「海水で喉を潤そうとする」ようなもので、長期的にはさらなるインフレを招く構造的な問題を孕んでいます。
しかし、民主主義社会において、政府は有権者の不満を和らげるために、バラマキ政策を止められないというジレンマを抱えています。
この「小さな政府」を実現できない政治の状況そのものが、インフレの長期化を決定づけている要因の一つと言えるでしょう。
インフレは実質的な「増税」であり、政府の借金を薄める効果を持ちますが、庶民の生活は苦しくなります。
この歴史的な転換点において、私たちは自らの資産をどう守り、どう増やすかを真剣に考える必要があります。
日本株の「大相場」は、単なる投機的なブームではなく、日本の通貨価値と経済構造そのものが再定義される過程で起きている現象です。
私たちは、今まさにその大きなうねりの中にいるのです。


