2028年までに施行されるiDeCo(個人型確定拠出年金)の改正案が可決されました。
今回の改正は、制度の拡充というポジティブな側面と、税制面での厳格化というネガティブな側面の両方を持ち合わせています。
ビジネスパーソンにとって、老後資金の形成を左右する重要な分岐点となるでしょう。
まず、最大の注目点は拠出金額の上限アップです。
自営業者などは月6万8000円から7万5000円へ、会社員や公務員は月2万円前後だった枠が月6万2000円まで大幅に引き上げられます。
これにより、これまでiDeCoだけでは不十分だった資産形成のスピードを加速させることができます。
資産形成の選択肢が広がるのは歓迎すべきことではないでしょうか?
次に、加入可能年齢の延長も大きなポイントです。
これまでの65歳未満から70歳未満へと引き上げられ、老齢基礎年金を受給していない等の条件を満たせば、より長く積み立てを継続できるようになります。
定年延長が当たり前となった現代において、働く期間に合わせて節税しながら運用できる期間が伸びるのは、非常に合理的な変更と言えます。
しかし、注意しなければならないのが受取時の「10年ルール」への変更です。
これは一部の利用者にとって実質的な増税となり得る改正です。
これまでは、iDeCoを一時金で受け取ってから5年空けて退職金を受け取れば、両方に「退職所得控除」をフル適用できるという裏技的な節税スキームが存在していました。
この期間が10年に延長されたのです。
例えば、60歳でiDeCoを受け取り、65歳で会社の退職金を受け取るプランを考えてみましょう。

この場合、新ルールでは10年の期間が空いていないため、退職所得控除が合算され、支払う税金が跳ね上がる可能性があります。
運用益が非課税でも、受取時に多額の税金を持っていかれては元も子もありません。
出口戦略の難易度は上がったと言わざるを得ないでしょう!
この「卒業試験」を突破するために、具体的な手順を検討する必要があります。
まず第一の選択肢は、受取時期の調整です。
①iDeCoを60歳で受け取り、会社の定年を延長して70歳で退職金を受け取る。
このように10年以上の間隔を確保することで、両方の控除を最大限に活用することが可能になります。
第二の選択肢は、受取形式の変更です。
②iDeCoを「一時金」ではなく「年金形式」で受け取る。
年金形式であれば公的年金等控除の対象となりますが、退職金との重複を避けることができます。
ただし、年金形式は社会保険料の負担増を招くケースもあるため、個別の精緻なシミュレーションが不可欠です。
第三の選択肢は、そもそもiDeCoへの依存度を下げることです。
③将来の出口戦略が不透明であれば、iDeCoの掛金を減らし、その分を新NISAに回す。
NISAであれば受取時の税金を気にする必要がなく、60歳まで資金が拘束されるリスクもありません。

今回の改正を受けて、NISAの優先順位はさらに高まったと言えるでしょう。
改正後もiDeCoの「60歳まで引き出せない」という最大のデメリットは変わりません。
そのため、家計の流動性を確保しつつ資産を増やすには、まず新NISAの枠(年間360万円、生涯1800万円)を優先して埋めるスタンスが基本となります。
iDeCoはあくまで「その次」の選択肢として捉えるのが賢明です。
今回の法改正により、iDeCoは単に「節税になるからお得」という単純な制度ではなくなりました。
自身の退職時期、想定される退職金額、そしてiDeCoの受取方法をセットで考える「トータルデザイン」が求められています。
安易な加入は、将来の大きな損失につながりかねません!
もはや自分一人で最適解を導き出すのは困難な時代です。
特定の金融商品を売りつけない中立的な専門家や、信頼できるコミュニティを活用してアドバイスを受けることを強くお勧めします。
リベシティのような場所で知見を得るのも一つの手でしょう。
数十万、数百万単位で手取り額が変わる話ですから、決して軽視してはいけません。
最後に、投資の基本は「今日が一番若い日」であるという意識を持つことです。
制度が変わることを嘆くのではなく、ルールを正しく理解し、自分のライフプランに最適化させる力こそが、これからの資産形成には必要不可欠です。
情報のアップデートを怠らず、賢く資産を守り、増やしていきましょう。
