職場において、他人を攻撃したり足を引っ張ったりする「性格の悪い人」は必ず一定数存在します。
精神科医の樺沢紫苑 (Kabasawa Shion) 氏は、こうした人物に遭遇した際の唯一無二の対処法として「スルーする力」を提唱しています。
多くの人は、相手からの攻撃を盾で受け止めようとして、その衝撃でメンタルを削られてしまいます。
しかし、重要なのは「闘牛士」の振る舞いです。
突っ込んでくる猛牛(ストレスや攻撃)に対し、ひらりと身をかわすことで、相手のエネルギーをそのまま通り過ぎさせるのです。
動画内では「当たらなければノーダメージ」という言葉が繰り返されますが、これは精神医学的にも理にかなった防衛策です。
人間関係の悩みを解決する上で非常に強力な指標となるのが、ユダヤの格言に由来する「1:2:7の法則」です。
どのような集団においても、10人いれば1人はあなたを嫌い攻撃してくる「嫌い嫌い星人」であり、2人はあなたの味方、残りの7人はあなたに無関心な中立層です。
メンタルを病んでしまう人の多くは、この「1割の攻撃者」に全神経を集中させ、家に帰ってからもその人物との嫌なやり取りを反芻してしまいます。
しかし、攻撃者を変えることは不可能です。

私たちは、攻撃してくる1人ではなく、自分を支えてくれる2人の味方にこそ、限られたエネルギーを割くべきなのです。
さらに、仕事と私生活の優先順位を明確にすることも不可欠です。
樺沢氏は「職場の人間関係はどうでもいい」と断言します。
会社を辞めてしまえば縁が切れる程度の関係に、人生の貴重なエネルギーを使い果たすのは合理的ではありません。
人生の本質は、家族や友人、パートナーとの豊かな時間にあります。
仕事で嫌なことがあっても「アフター5」を全力で楽しむことで、日中のネガティブな感情を中和させることが可能です。
自分自身を「真面目すぎる」自覚がある人ほど、この「適当さ」を戦略的に取り入れる必要があります。
具体的な「スルーの練習法」として、樺沢氏は「3行ポジティブ日記」を推奨しています。
寝る前にその日あった楽しかったことを3つ書き出すというシンプルな習慣ですが、これを継続することで脳の焦点が「ネガティブ」から「ポジティブ」へと強制的にシフトします。
スルーする力は一朝一夕には身につきませんが、0か100かで考えず、まずは5%や10%ずつ「受け流す練習」を積み重ねていくことが、最終的に鋼のメンタルを構築する唯一の道となります。

【具体的なスルー技術の実践手順】
① 相手の攻撃を認識する:攻撃された際、反射的に怒ったり落ち込んだりせず、「あ、この人は性格が悪い人なんだな」と心の中で客観的にラベリングする。
② 物理的・心理的距離を置く:真正面から議論せず、闘牛士が赤い布をひらめかせるように、その場をやり過ごす。
「バカだなあ」と心の中で笑い飛ばす余裕を持つ。
③ 思考の切断:業務が終わった瞬間に、職場の嫌な人のことを考えるのを止める。
「他人は変えられない」という原則を思い出し、自分の支配下にある「自分の楽しみ」に没入する。
④ 1:2:7の再確認:攻撃されたときは「ああ、これが10人中1人の攻撃者か、法則通りだな」と確認し、味方である2人の存在を思い出す。
⑤ 1日の締めくくり:寝る前に「3行ポジティブ日記」を書き、脳のコンディションを整えてから眠りにつく。
これを繰り返すことで、スルーする力の精度を上げていく。

