2024年の新NISA開始に伴い、S&P500や「オルカン(eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー))」といったインデックスファンドへの投資が過熱しています。
しかし、経済アナリストの森永康平(Kohei Morinaga)氏とBloomo(ブルーモ)証券の中村仁(Hitoshi Nakamura)氏は、この現状に警鐘を鳴らします。
多くの個人投資家が、過去10年の右肩上がりの相場を「今後も続く前提」で投資していますが、これは歴史的に見れば非常に危険なモメンタム投資(勢いに乗るだけの投資)に陥っている可能性があります。
現在のマクロ環境における最大の不確実性は、AIによる経済構造の転換です。
森永氏は、AIとロボティクス(フィジカルAI)の融合により、建設や介護、物流といったデスクワーク以外の領域も代替される可能性を指摘しています。
一方、中村氏は2000年の「dot-com bubble(ドットコムバブル)」との比較から、現在のAIブームを分析します。
NVIDIA(エヌビディア)のような実体的な利益成長がある一方で、2026年頃までに「巨大なインフラ投資に見合う利益成長」を各企業が出せなければ、バブル崩壊のリスクが顕在化すると予測しています。
国際情勢の緊迫化も無視できません。
中東情勢の悪化(イスラエル・イラン間の緊張など)は、原油価格の高騰を通じてインフレを再燃させます。
かつては「有事の金(ゴールド)買い」と言われましたが、足元では金利上昇の影響でゴールドすら下落する局面があり、従来の投資の常識が通用しなくなっています。

ドル基軸通貨体制の揺らぎや、各国が軍備費を拡大せざるを得ない状況は、サプライチェーンの分断を招き、さらなる物価上昇圧力を生む構造へと変化しています。
日本特有の課題として「デフレ脱却への適応」があります。
長年続いたデフレ下では、現金保有が「実質的な価値上昇」を意味する合理的な選択でした。
しかし、現在のインフレ環境かつ低金利の日本では、預金は「実質的なマイナス資産」でしかありません。
この焦りから「NISA貧乏」と呼ばれる、生活費を削ってまで投資に回す層が増えていますが、これには「Opportunity Cost(オポチュニティコスト/機会費用)」の視点が欠落していると両氏は語ります。
「Opportunity Cost(機会費用)」とは、何かを選ぶことで失われる利益のことです。
20代などの若年層が、過剰な投資のために旅行や自己投資を控えることは、稼ぐ力を高める「人的資本」や、人脈を広げる「社会関係資本」を毀損(きそん)することに他なりません。
アメリカの教育現場では、就学前からこの概念が徹底されています。
人生全体のリターンを最大化するためには、金融資本だけに偏らず、若いうちは自己研鑽に投資し、30〜40代で拡大した収入を運用に回すという時間軸の戦略が必要です。
具体的な運用手法として、中村氏は「110マイナス年齢」という株式比率の目安を提示しつつ、株式以外の資産、特に「債券」の重要性を強調します。

世界の投資可能資産で最大規模なのは実は債券であり、下落局面での守りの資産として機能します。
しかし、個人が債券を含めた複雑なポートフォリオを管理するのは困難でした。
これをテクノロジーで解決しようとするのがBloomo証券のアプローチであり、米国株式だけでなく、米国債や金などのETFを、目標とする比率で手軽に運用・リバランスできる仕組みを提供しています。
多くの個人投資家は、自分の経験(経験バイアス)のみで判断し、市場平均より年率2〜3%低いリターンに甘んじているというデータがあります。
これは、高値で飛びつき、暴落で狼狽(ろうばい)売りをしてしまう心理的特性によるものです。
一流のプライベートバンキングが実践するように、資産運用は「攻め」だけでなく「守り」とのバランスを重視し、自分自身のライフステージやリスク許容度に合わせた「独自のポートフォリオ」を持つことが、不確実な時代の防衛術となります。
結論として、オルカンやS&P500は「投資の入り口」としては優れていますが、それだけで安泰と考えるのは短絡的です。
世界情勢を俯瞰し、AIによる産業転換や地政学リスクを理解した上で、金融資産・人的資本・社会関係資本の3つを最適に配分することが求められます。
目先の「お得感」やSNSの流行に流される「空気」に支配されず、論理的かつ長期的な視点を持って次なる一手を打つことが、真の資産形成への近道と言えるでしょう。


