現代社会において、個人が持続的に成長できる環境とはどのようなものでしょうか。
株式会社Momentor(モメンター)代表の 坂井 風太 (Futa Sakai) 氏は、その最重要条件として「顧客や社会に誠実に向き合う文化」を挙げます。
誠実さという言葉は抽象的ですが、それを定義しすぎないことで、一人ひとりが「何が誠実か」を問い続ける力、すなわち「問う力」が養われると説きます。
この誠実さが欠如し、単に環境に適応するだけの状態では、真の意味で顧客に貢献し、自分に誇りを持てるキャリアを築くことは困難です。
この議論のパートナーとして登壇した PwC Japan有限責任監査法人 (PwC Japan LLC) パートナーの 田中 大介 (Daisuke Tanaka) 氏は、組織の行動指針として「探求・尊重・躍進」の3つを掲げていることを明かします。
特に「探求」は、監査法人としての枠を超え、産業や社会の課題に対して好奇心を持ち続ける姿勢を意味します。
また、「躍進」は単なる成長の強要ではなく、ポジティブにコンフォートゾーンを抜け出し、自律的に成長をドライブすることを指しています。
同法人は「Total People Management(トータル・ピープル・マネジメント)」を掲げ、採用から育成、評価、配置までをシームレスに繋ぐことで、組織全体での最適化を図っています。
特筆すべきは、PwC Japan監査法人の事業構造です。

一般的に監査法人は監査業務が主軸と思われがちですが、現在は監査とアドバイザリー業務の売上比率が約50:50となっており、職員の半数は公認会計士以外の専門家です。
サイバーセキュリティ対策、クラウドコンピューティングの活用、AIガバナンスの構築、DX推進など、社会の最先端の課題解決に挑むアドバイザリー業務が大きな柱となっています。
これにより、会計の枠に留まらない多様なキャリアパスが提供されており、入社1年目からグローバル案件に携わることも珍しくありません。
組織文化の根幹にあるのが「Integrity (インテグリティ / 誠実さ)」です。
田中氏は、インテグリティを「信頼の土台」と位置づけ、あえて厳密な日本語訳を与えていません。
それは、一人ひとりが自分にとってのインテグリティを考え、実践することを重視しているからです。
採用においても、自分を過大に見せるのではなく、失敗を認め、誠実に他者と向き合えるかどうかが重要な基準となっています。
この価値観が浸透しているからこそ、部門を超えて専門性を掛け合わせる「Cross-LoS (クロス・ライン・オブ・サービス)」という協業が日常的に行われ、複雑な社会課題への対応を可能にしています。
現場の声を代表して登壇した 原田 莉奈 (Rina Harada) 氏は、新卒入社ながら「マルチアサイン制度」を通じて、AIガバナンスやサイバーセキュリティなど幅広い案件に従事しています。

彼女が感じているのは、若手の意見が尊重される「Speak Up」の文化です。
自分の意見を自由に発信する「Speak Up」に対し、周囲がそれを真摯に受け止める「Listen Up」、そして改善に向けて共に動く「Follow Up」がセットで機能していることが、心理的安全性を高め、個人の主体的な挑戦を後押ししています。
一方、中途入社(キャリア入社)の 小林 明日香 (Asuka Kobayashi) 氏は、前職の損害保険業界での経験を活かしつつ、入社後に内部監査や生成AI活用の専門性を身につけました。
PwC Japanグループ内のコンサルティング部門と連携し、会計知識を武器にDX推進プロジェクトを成功させるなど、異なる専門性を持つメンバーと切磋琢磨できる環境が、自身の引き出しを増やす契機になったと語ります。
このように、既存の専門性に安住せず、周辺領域へと職能を広げていける柔軟性が、同法人の大きな魅力と言えるでしょう。
働きやすさの面でも、PwC Japan監査法人は高い水準を維持しています。
離職率は約7〜8%と低く、ハイブリッドワーク導入率は100%、男性の育児休業取得率も100%を達成しています。
中長期的に自分らしい働き方を選択できる基盤があるからこそ、プロフェッショナルとして質の高い仕事を継続できるのです。
最終的に、持続的な成長とは「スキル獲得」だけを目的とするのではなく、インテグリティのある毎日を積み重ね、仲間と共に社会の信頼を支えるプロセスそのものの中に存在することが、本セッションを通じて示されました。


