現代のビジネスパーソンにとって、生産性を高めるための最大の鍵は、努力の量ではなく「イシュー」の設定にあります。
イシューとは、単なる課題ではなく、今この瞬間に答えを出すべき「テーマとなる問い」を指します。
多くの人が陥る罠は、与えられた問題を解くスキルばかりを磨き、その問題が本当に解く価値があるのかを考えないことです。
安宅和人 氏は、とにかく走り回って答えの数や質だけを追い求める姿勢を「犬の道」と呼び、生産性を劇的に下げる要因として厳しく否定しています。
仕事の成果は「イシューの質」と「解の質」の二つの軸で決まります。
たとえ100点満点の答えを出したとしても、その問い自体が的外れであれば、ビジネスにおける価値はゼロに等しくなります。
したがって、私たちは作業に着手する前に「これは本当に今解くべき問いなのか?」というイシューの見極めに、全エネルギーの多くを割くべきなのです。
この優先順位を間違えると、膨大な時間と体力を浪費するだけで、組織に貢献することはできません。
では、どのような問いが「ダメなイシュー」なのでしょうか?一つ目は、スタンスが曖昧なものです。

「〜の今後はどうなるか」といった問いには仮説がなく、調査範囲が無限に広がってしまいます。
二つ目は、あまりに常識的すぎるものです。
「ブランド力を上げるべきか」といった誰でもYesと答えるような問いは、結論が出ても具体的な行動の変化に繋がりません。
これらは時間を浪費するだけの「なんちゃってイシュー」であり、避けるべき対象です。
優れたイシューを設定するためには、具体的な手順を踏む必要があります。
まず、自分なりに白黒はっきりさせた「仮説」を立てること。
次に、既存の常識を疑い、解決した際の影響力が大きいポイントを突くことです。
例えば、ビールの売上不振に対し「若者向けに刷新すべきか」と問う前に「そもそも市場全体が縮小していないか」あるいは「高齢者市場にこそ勝機がないか」といった、異なる角度からの強いスタンスが必要になります。

この良いイシューを見つけるための唯一の道は、徹底した「一次情報」の収集です。
ネットニュースや他人の報告書といった二次・三次情報には、他人の偏見や常識というフィルターがかかっています。
工場の現場、店舗の顧客、実際のユーザーの生の声など、加工されていない生の情報を自ら取りに行くことで、初めて本質的な課題が見えてきます。
ただし、情報の集めすぎは知恵を停滞させるため、必要な情報を得たら速やかに仮説構築へ移行すべきです。
最後に、設定したイシューは必ず言語化し、常に意識の片隅に置いておくことが重要です。
人間は分析や資料作成といった「作業」に没頭すると、本来何を解決しようとしていたのかを忘れ、作業自体が目的化してしまうからです。
書面に残し、チームで共有し、議論の軸をぶらさないこと。
この愚直な繰り返しこそが、あなたを圧倒的な生産性を誇る「プロフェッショナル」へと変貌させる最短ルートなのです。


