ペンシルベニア大学教授であるアダム・グラントが著した『GIVE & TAKE』は、ビジネスにおける人間関係の力学を解き明かした名著です。
本書では、人間を大きく3つのタイプに分類しています。
1つ目は、見返りを期待せず他者に貢献する「Giver(ギバー)」。
2つ目は、自分の利益を最優先し、他者から奪おうとする「Taker(テイカー)」。
そして3つ目は、与えられた分だけ返し、奪われた分だけやり返す「Matcher(マッチャー)」です。
統計によれば、世の中の約55%がMatcherであり、Giverが25%、Takerが20%という割合で存在しています。
驚くべき事実は、社会的・経済的に「最も成功していない層」を調査すると、そこにGiverが集中しているという点です。
彼らは頼まれごとを断れず、自分の時間やエネルギーを他者のために使い果たしてしまいます。
その結果、本来集中すべき業務が疎かになり、燃え尽きてしまうのです。
では、やはりテイカーとして振る舞うのが正解なのでしょうか?
結論から言えば、Takerは短期的には成功しても、長期的には必ず没落します。
なぜなら、世の中の過半数を占めるMatcherが、Takerの不義理に対して「復讐」を果たすからです。

Matcherは公正さを重んじるため、奪うばかりの人間を許さず、その評判を失墜させたり、協力を拒んだりします。
これにより、Takerの成功は一時的なものに留まります。
一方で、成功のピラミッドの「最上位」に君臨しているのも、実はGiverなのです。
同じGiverでありながら、最下位と最上位に分かれる決定的な違いは、「自己犠牲」の有無にあります。
成功するGiverは、自分を犠牲にして相手に尽くすのではなく、自分も相手も利益を得られるWin-Winの関係を構築しようとします。
彼らは「誰に与えるか」を慎重に見極めており、特にTakerに対しては安易に手を貸さない戦略を持っています。
成功するGiverになるための具体的なステップは、以下の通りです。
①まずは自分が搾取される対象にならないよう、相手がTakerかどうかを判別する目を養うこと。
②SNSのアイコンが実物以上に過度に盛られていないか、自分より上の立場の人にだけ媚びていないかを観察する。
③「あなたの人生を劇的に変えた人を4人挙げてください」という質問を投げかけ、自分より影響力のある人ばかりを挙げる場合は注意する。
④相手がTakerであると判断した場合は、物理的・心理的な距離を置き、自分のリソースを奪わせないように徹底する。
⑤その上で、Matcherや他のGiverに対して、相乗効果が生まれるような形で知見やチャンスを提供する。

このように、成功するGiverは決して「お人好し」ではありません。
自分の価値を最大化し、それを他者と共有することで、周囲のMatcherからの信頼を集め、より大きなチャンスを引き寄せているのです。
自分が現在どのタイプに属しているかを客観的に把握し、戦略的にGiverとしての振る舞いを修正することが、現代のビジネスパーソンには求められています。
もし、あなたが日々多くの依頼に追われ、疲弊しているなら、それは「自己犠牲型のGiver」に陥っているサインかもしれません。
まずはテイカーから逃げる勇気を持つことです。
テイカーは相手から奪うためなら愛想よく振る舞うことも厭いませんが、その本性は「誰に貢献しているか」という視点の欠如に現れます。
自分の人生の時間を誰に捧げるべきか、その優先順位を明確にすることが、一流への第一歩となるでしょう。
最後になりますが、成功は一人で成し遂げるものではありません。
しかし、そのパートナー選びを間違えれば、成功への道は閉ざされます。
テイカーという「百害あって一利なし」の存在を排除し、健全なギブの連鎖が起きるコミュニティに身を置くこと。
それが、アダム・グラントが本書を通じて伝えたかった真の成功戦略なのです。


