1936年の出版以来、世界で1500万部以上を売り上げている名著『人を動かす』。
著者のデールカーネギーは、元々プレゼン技術を教える講師でしたが、ビジネスの本質は「相手に行動してもらうこと」だと気づきました。
しかし、100年前の当時、人を動かす本質を説いた本はどこにもありませんでした。
そこで彼は15年もの歳月をかけて、哲学、心理学、偉人の伝記を研究し、成功者へのインタビューを重ねてこの一冊を書き上げたのです。
本書には全部で30の原則が記されていますが、現代人が最短で成果を出すためにエッセンスを絞り込むなら、結論はたった一つ。
それは「相手に重要感を持たせる」という原則に集約されます!
なぜ、相手に重要感を持たせることがこれほどまでにパワフルなのでしょうか?
その理由は、人間の持つ根源的な欲求にあります。
心理学者のウィリアムジェームズは、人間が持つ最も強い感情は「他人に認められたい」という気持ちであると断言しました。
食欲や睡眠欲と同じくらい、自分を重要な人物だと思いたいという欲求は強く、これにダイレクトにアプローチされると、人間は抗うことができないのです。
具体的にどうすれば相手に重要感を与えられるのか?
本書が提示する最も強力なノウハウは「褒める」ことです。

名前を覚える、聞き手に回る、批判をしないといったテクニックも重要ですが、カーネギーは「心から褒めること」の重要性を繰り返し力説しています。
知っているだけでなく、実際にできているかどうかが、リーダーとしての分かれ道となります。
歴史上の偉人もこの力を活用していました。
歴史上2番目の大富豪とされる「鉄鋼王」アンドリューカーネギーは、その代表例です。
彼の墓石には「己より賢明なる人物を身辺に集める方法を心得し者、ここに眠る」と刻まれています。
彼は自分一人の力ではなく、周囲の人々を褒め称え、その重要感を満たすことで、優秀な人材を惹きつけ動かしてきたのです。
アンドリューカーネギーが、シュワブという男に当時の価値基準で年収1億円という破格の待遇を与えたエピソードも象徴的です。
シュワブは鉄鋼の知識が誰よりもあったわけではありません。
彼が選ばれた最大の理由は、類まれなる「褒め上手」だったからです。
周囲のパフォーマンスを最大化させるその能力こそが、高額な報酬に値すると判断されたのです。
ここで一つ、興味深い矛盾が生じます!
アドラー心理学で知られるアルフレッドアドラーは、「褒めてはいけない」と説いているからです。

褒める行為は相手を操作しようとする意図が含まれ、承認欲求の奴隷を生んでしまうと警告しています。
一見するとカーネギーとアドラーは真逆のことを言っているように思えますが、実は共通点があります。
それは「他人に誠実な関心を寄せる」という点です。
ビジネスの現場とプライベートでは、この二つの理論を使い分けるのが賢明です!
スピード感が求められるビジネスの現場では、カーネギー式で積極的に相手を褒め、承認欲求を刺激して即座に行動を促すべきです。
相手が動いてくれないと嘆く前に、まずは相手の重要感を満たしているかを自問自答してみてください。
一方で、家族や身近な友人に対してはアドラー式が適しています。
特定の行動を褒めて操作しようとするのではなく、その人の存在自体に感謝し、勇気づける。
むやみに自分の思い通りに動かそうとせず、信頼関係を築くことを優先するのです。
結局のところ、人を動かす鍵は「自分」ではなく「相手」の中にあります。
自分の欲求を押し通すのではなく、相手が何を求めているのか、どこに価値を感じているのかを徹底的に観察してください。
相手に重要感を与えることは、巡り巡ってあなた自身の大きな影響力となって返ってくるはずです。


