FRB(連邦準備制度理事会)の Jerome Powell (ジェローム・パウエル) 議長は、議会証言において経済の現状と金融政策の見通しを報告する。
現在、米国の政策金利は5.25〜5.50%と23年ぶりの高水準に据え置かれている。
5月のCPI(消費者物価指数)は前年同月費+3.3%まで鈍化し、労働市場においても失業率が4.1%に上昇するなど、受給の緩和が見え始めている。
しかし、パウエル議長が早期利下げに踏み切る可能性は低い。
その最大の理由は、1970年代の歴史的教訓にある。
当時、インフレの鈍化に合わせて拙速に利下げを行った結果、インフレが二度にわたって再燃し、さらなる高金利政策を余儀なくされた。
FRBはこの二の舞を避けるため、物価目標2%への回帰を確信できるさらなる証拠を求めているのである。
また、FRBが利下げを決断するトリガーは常に「市場の悲鳴」であった。
2001年の Dot-com Bubble (ドットコムバブル) 崩壊時、S&P500が19.3%下落した後に利下げが実施された。
2007年の金融危機(サブプライムローン問題)直前も、11.9%の調整を経てから利下げに踏み切っている。

2019年の局面でも、前年の20.2%という暴落が背景にあった。
現在のように株式市場が過去最高値を更新し続けている状況で利下げを行えば、資産効果によって消費が刺激され、インフレを再燃させるリスクがある。
FRBはさらなる株高を演出することを嫌い、むしろ市場を冷やすような「タカ派」的なメッセージを送り続ける可能性が高い。
投資家が注目すべきは、米国株特有のアノマリーである。
例年、大統領選挙を控えた秋口(9月から10月)には市場が急落する傾向がある。
このタイミングで株価が調整し、インフレ鈍化の確証が得られて初めて、FRBは利下げのカードを切ることができるようになる。
そのため、最初の利下げは11月か12月になると予測するのが合理的だ。
分散投資の観点では、欧州株への注目も必要である。
iShares Europe ETF (iev) と S&P 500 ETF (ivv) の相対指数を見ると、2008年以降、欧州株は米国株を大きく下回り続けてきた。
しかし、歴史的には2003年から2008年のように欧州株が優位な時期もあり、米国株一辺倒のポートフォリオにはリスクが伴う。

トレンドは一度始まると数年単位で続く。
現在の欧州株の劣後トレンドが反転し、ブレイクアウトした場合には、長期的なパフォーマンスの逆転が起こり得る。
特定の地域や資産に固執せず、常にフラットな視点で分散投資を検討することが、不安定なマクロ環境を生き抜く鍵となる。
最後に、暴落を煽るような情報の取り扱いにも注意が必要だ。
多くのインフルエンサーは、自身の信念や価値観に基づいて発信しているが、投資家はそれらの情報を鵜呑みにせず、客観的なデータと歴史的背景に基づいて自らの判断を下さなければならない。
現在の市場環境は、期待先行で買われている側面が強い。
利下げを待ち望む市場に対して、FRBが慎重姿勢を崩さない限り、どこかで期待の剥落による調整が訪れる。
その調整こそが、真の利下げサイクルの幕開けとなるだろう。
賢明な投資家は、その調整局面を冷静に待つべきである。


