青山学院大学相模原キャンパスは、約16万平米の広大な敷地を誇る理工学拠点です。
ここでは「研究者の夢」をテーマに、4つの研究室がそれぞれ独創的なアプローチで未来を切り拓いています。
まず、伊藤雄一 (Yuichi Itoh) 教授が率いる伊藤研究室では、HCI(Human-Computer Interaction)を専門とし、「コンピューターの姿を消す」という夢を掲げています。
これはコンピューターが物理的に無くなるのではなく、生活環境に自然に溶け込み、ユーザーが意識せずにその恩恵を享受できる状態を指します。
具体的な成果として、椅子に座るだけで心理状態を測定する技術や、カメラを使わずに床を歩く際の「歩容(ほよう)」データから個人を特定するセキュリティ技術が挙げられます。
また、下唇の温度を制御して味覚を変化させる研究も進められており、ビールジョッキの最適温度が「12℃」であるといった、人間の感覚を科学的に最適化する試みがなされています。
次に、田崎勇一 (Yuichi Tazaki) 教授の田崎研究室(知技能ロボティクス)では、「人手不足とは無縁な世界」を夢見ています。

実験室は住宅展示場を模した特殊な環境となっており、生活空間にロボットを配置する検証が行われています。
例えば、ベッドから生えたロボットアームがマッサージを行う際、VRゴーグルを併用することで心理的な不安を取り除き、リラックス効果を高める工夫が施されています。
さらに、自動でメイクアップを行うロボットの開発も進んでいます。
この技術の肝は、人の肌に触れる際の繊細な力加減をリアルタイムで計測・制御できる点にあります。
かつては産業用の檻の中にいたロボットが、生活空間で優しく人に触れることができる「柔らかいロボット技術」へと進化している様子が伺えます。
宇宙物理学の分野では、坂本貴紀 (Takanori Sakamoto) 教授の坂本研究室が「未知の天体の発見」に挑んでいます。
従来の光による観測に加え、近年注目されている「重力波」を指標に天体を探す新しい天文学を展開しています。

2017年に観測された連星中性子星の合体イベントは、重力波と光の両方で捉えられた歴史的瞬間でした。
坂本教授は、重力波から得られる「天体の質量」という直接的な情報を武器に、独自のナノ衛星開発なども視野に入れ、世界中の研究者と競いながら第二の劇的な発見を目指しています。
質量の情報は、その天体がブラックホールなのか中性子星なのかを特定する決定的な証拠となります。
最後に、平田普三 (Hiromitsu Hirata) 教授の平田研究室(脳科学)では、「魚の研究を通して動物の心を知る」という純粋な好奇心を追求しています。
モデル生物としてゼブラフィッシュなどの魚類を用い、遺伝子組み換え技術を駆使して神経細胞の働きを可視化したり、特定の機能を制御したりすることで、行動の裏にある分子レベルのメカニズムを解明しています。
例えば「雨が降ると魚は活発に動かなくなる」という現象に対し、それがどのような化学反応によって引き起こされ、生存戦略としてどのような意味を持つのかを突き止めています。
このように、一見全く異なる分野の研究が「人類の進歩」という一つの大きな目的に向かって相模原の地で交錯しています。


