世界経済フォーラム(World Economic Forum)の2026年年次総会において、Tesla(テスラ)およびSpaceX(スペースX)のCEOであるElon Musk(イーロン・マスク)氏と、BlackRock(ブラックロック)のCEOであるLaurence D. Fink(ローレンス・D・フィンク)氏による対談が行われました。
マスク氏は、自身の全事業に共通する哲学として「文明の未来を最大化し、意識を地球外へと拡張すること」を掲げています。
特にSpaceXの活動は、意識を「広大な暗闇の中に灯る小さなキャンドル」と捉え、自然災害や人為的災害によってその灯が消えないよう、人類を多惑星種にすることを使命としています。
AI(人工知能)とロボット工学の進化について、マスク氏は「持続可能な豊かさ(Sustainable Abundance)」という新たな概念を提示しました。
人型ロボットが普及すれば、1体あたりの生産性とロボットの総数を掛け合わせたものが経済出力となり、世界経済は前例のない爆発的な拡大を遂げると予測しています。
このシナリオでは、ロボットが人間のあらゆるニーズを満たすため、貧困の解消が可能になる一方で、人間が「目的」を失うリスクについても議論されました。
現在、AIモデルの進化や自律走行マシンの普及を阻んでいるのは、チップの生産量ではなく「電力供給」であるとマスク氏は断言しています。

AIチップの生産が指数関数的に増える一方で、電力供給の伸びは年率3〜4%に留まっているため、近いうちに電力が最大の制約要因になります。
この解決策として、中国が年間1,500ギガワットもの生産能力を誇る太陽光発電に注力している事例を挙げ、米国や欧州も関税障壁を越えて大規模な太陽光シフトを断行すべきだと強調しました。
具体的な数値として、マスク氏は「100マイル四方(約160km四方)」の太陽光パネル設置面積があれば、米国全土の電力を賄えると説明しました。
これは米国の総面積からすれば極めて小さな割合に過ぎません。
さらにSpaceXの新たな取り組みとして、数年以内に「太陽光発電によるAI衛星」を打ち上げる計画を明かしました。
地球上の土地や電力の制約を受けない宇宙空間で、膨大な計算リソースを確保するという壮大な構想です。
寿命の延長や老化の逆転についても言及がありました。

マスク氏は、人体の35兆個の細胞がほぼ同じ速度で老化することから、体内に「同期された時計」が存在すると推測しています。
老化のメカニズムを特定できれば、その逆転は「驚くほど明白な解決策」になる可能性があると述べました。
ただし、社会の硬直化を防ぐために死には一定のメリットがあるという冷静な視点も併せ持っています。
最後に、AIの安全性についての懸念も示されました。
SF映画『Terminator(ターミネーター)』のような悲劇を避けるため、極めて慎重な開発が必要であるとしつつも、基本的には「非常に楽観的な未来」を信じていると締めくくりました。
マスク氏の視点は、単なる技術論に留まらず、エネルギー、宇宙、生命科学を統合した文明のサバイバル戦略そのものであると言えます。


