理系の世界には、その難解で高尚な理論とは裏腹に、驚くほど「ダサい」と感じられる用語が数多く存在します。
本動画では、東京理科大学の山本先生をゲストに迎え、SNSに寄せられた約2000件もの意見を基に、不名誉な理系用語ランキングを決定しました。
専門家たちの鋭い視点から、なぜ特定の用語がこれほどまでに理系人の心をざわつかせるのか、その本質的な理由が解き明かされます。
まず議論の口火を切ったのは、「駒込ピペット」や「メートル毎秒毎秒」といった馴染み深い用語です。
駒込ピペットは地名に由来する実用的な名称ですが、洗練さには欠けると指摘されます。
また、加速度の単位である「メートル毎秒毎秒」は、その繰り返しの響きが日常の「毎度毎度」のような俗っぽさを感じさせ、物理学の厳格さを損なっているという意見で一致しました。
続いて議論は、概念と名称のギャップへと移ります。
量子論で扱われる「仕事関数」は、物理学的な重要性に反して「仕事」というあまりに日常的で疲労を連想させる言葉が使われており、学習者のテンションを下げる要因となっているようです。
生物学の「おばあちゃん細胞仮説」に至っては、物理学者から見れば「感覚が外れすぎている」と驚きをもって受け止められ、分野間のネーミングセンスの違いが浮き彫りとなりました。

歴史的な背景や翻訳の不備が「ダサさ」を生んでいる例も紹介されました。
「ブドウパンモデル」は、元来イギリスの伝統的な菓子を指す「プラムプディング」の訳語ですが、日本文化に合わせて強引に置換された結果、最先端の原子モデルとしての威厳を失ってしまいました。
こうした名称の違和感は、専門家が外部の人間に説明する際の「恥ずかしさ」に直結しており、学問の普及における隠れた障壁となっているのです。
ランキングの第3位に選ばれたのは、自然界の基本相互作用である「強い力・弱い力」です。
電磁気力や重力といった重厚な名称がある中で、強弱というあまりに直接的で安直な形容がなされたことに対し、専門家からは「もう少しどうにかならなかったのか」と溜息が漏れました。
重力が他の力と比較して無視されているかのような命名の基準についても、その不条理さが指摘されています。
第2位には、集合論で用いられる「ベン図」がランクインしました。
これは考案者の名に由来するものですが、日本語特有の音の響きが特定の排泄行為を連想させてしまうという、日本独自の不運なケースです。

教育の初期段階で出会う用語であるだけに、多感な時期の学習者に与える影響は無視できず、より現代的で洗練された別名の必要性が議論されました。
そして栄えある(?)第1位に選出されたのは、統計学の「箱ひげ図」です。
この用語は、その形状を箱と髭に見立てた非常に素朴なものですが、統計という理知的でクールな分野において、そのビジュアルの描写があまりに拙すぎると酷評されました。
かつて「髭結晶」が「ウィスカー」や「ナノワイヤー」へと改称され、かっこよさを手に入れていった歴史があるだけに、箱ひげ図の停滞感は際立つ結果となりました。
今回のランキングを通じて明らかになったのは、用語のネーミングが単なる記号以上の役割を果たしているという事実です。
かっこいい用語は学習者のモチベーションを鼓舞し、学問への門戸を広げる力を持っています。
逆に「ダサい」用語は、専門家を萎縮させ、初心者に不要な先入観を与えかねません。
将来的な教科書の改訂において、文部科学省がこうした「用語のセンス」を考慮に入れることが切に望まれます。


