私たちは何のために働いているのでしょうか?その問いに対し、多くの人は「生活のための給料」と答えるかもしれません。
しかし、レジェンド的な存在である田坂 広志氏が著書『仕事の思想』で説くのは、給料を報酬と捉えているうちは、まだビジネスパーソンとしてレベル1の段階に過ぎないという厳しい事実です。
給料だけを目的とする労働は、自分の貴重な人生を会社に売り渡している状態に等しいと氏は警鐘を鳴らしています。
本動画では、ある「ジャズ好き商社マン」の成長物語を通じて、働く報酬のレベルアップを解説しています。
まずレベル1は「給料が報酬」の段階です。
内定者時代の彼は、仕事は生活の手段であり、真の生きがいは趣味のジャズにあると割り切っていました。
しかし、社会人3年目を迎えると「能力が報酬」となるレベル2へと進みます。
できなかったことができるようになる、自分の中の「絵の具(スキル)」が増えていく感覚そのものが、給料以上の喜びへと変わっていくのです。
社会人10年目、脂が乗ってきた彼は「仕事が報酬」となるレベル3に到達します。
この段階の鍵は「企画力」です。
ここでの企画力とは、単なるアイデア出しではありません。

自分、会社、社会(顧客)の三者を同時にハッピーにする「三方よし」を構想し、実現する力のことです。
仕事の全体像を把握し、自ら主体となって動かすことで、仕事そのものが最高のご褒美へと進化します。
受動的な作業から能動的な創造へと、働く姿勢が劇的に変化する瞬間です。
さらに社会人15年目、彼は最終形態であるレベル4「成長が報酬」の境地に至ります。
これはスキルアップの次元を超えた、人間としての「成熟」を目的とする段階です。
もはや仕事の内容は何でもいい。
どんな仕事であっても、心を込めて打ち込むことで人間性を磨く「修行」と捉えるのです。
たとえ自己犠牲を伴う場面があっても、それが誰かのためになり、自分の魂を成熟させるならば、それ自体が揺るぎない報酬となります。
なぜ「人間的成長」が究極の報酬なのでしょうか?それは、給料や役職、魅力的なプロジェクトといった外部から与えられる報酬は、景気や他者の評価によって容易に奪われ得るからです。
しかし、自分の中に蓄積された「人間としての深み」や「逆境に動じない心」は、誰にも奪うことができません。

自分の心をどう保つかは完全に自分次第であり、それこそが絶対的な自由と幸福をもたらす源泉となるのです。
ただし、この高潔な思想には注意点があります。
それは「他人に押し付けられた瞬間にブラック企業の詭弁になる」という点です。
経営者や上司から「仕事が報酬だ、成長しろ」と強要されるのは、単なる搾取です。
この思想は、あくまで自分自身の試行錯誤や苦労の中から、内発的に湧き上がってくるものでなければ意味をなしません。
知識として知るだけでなく、実体験を通じて自分なりの「仕事の思想」を掴み取ることが不可欠です。
最後に、現代の日本において飢え死にするリスクは極めて低くなっています。
そんな恵まれた環境にありながら、最も低いレベルである「給料」のためだけに働き、人生を浪費するのはあまりにももったいないことです。
本書が提示する「能力・仕事・成長」という階段の地図を手に、一歩ずつ自分の歩みを進めることが、一流のビジネスパーソンへの道なのです。
目の前の仕事にどう向き合うか、その姿勢一つで明日からの景色は確実に変わっていくはずです。


