行政不服審査法の盲点「再審査請求」の全体像を掴む

行政書士試験において、行政不服審査法は得点源となる重要な科目であるが、その中でも再審査請求(Saishinsa Seikyu)は受験生が手薄になりがちなマイナー分野である。
しかし、直近5年ほど出題がないことから、令和8年度(R8)試験では非常に警戒すべきテーマと言える。
不服申し立ての基本は審査請求であるが、法律に特別の定めがある場合に限り、例外的に「再調査の請求」と「再審査請求」が認められている。
再審査請求は、審査請求の裁決を経た後に行う「後置」のステップである。
法律に定めがある場合にのみ可能という点は再調査の請求と共通しているが、タイミングが決定的に異なる。
審査請求の裁決に納得がいかない国民を救済するための制度であり、その構造を正確に理解することが合格への第一歩である。
受験生を惑わす「1ヶ月」の請求期間と対象の選択

再審査請求の大きな特徴は、その請求期間の短さにある。
通常の審査請求が「処分を知った日の翌日から3ヶ月以内」であるのに対し、再審査請求は裁決があったことを知った日の翌日から1ヶ月以内に申し立てなければならない。
この「3ヶ月」と「1ヶ月」の数字の入れ替えは、択一式試験で最も狙われやすいポイントの一つである。
また、再審査請求の対象は「原処分(元の処分)」と「審査請求の裁決」のいずれかを選択できる、いわゆる原処分主義と裁決主義の併用に近い形をとっている。
例えば、生活保護の申請が却下され、審査請求でも棄却された場合、厚生労働大臣などの再審査庁に対して、元の却下処分が違法であると訴えることも、裁決の手続きがおかしいと訴えることも可能である。
| 項目 | 審査請求 | 再審査請求 |
|---|---|---|
| 請求期間 | 知った日の翌日から3ヶ月 | 知った日の翌日から1ヶ月 |
| 法律の定め | 不要(原則) | 必要(個別法に規定) |
| 対象 | 行政庁の処分・不作為 | 審査請求の裁決・原処分 |
難問対策:第64条3項「裁決と処分の違法性」の力学

試験で差がつくのが、行政不服審査法第64条3項の規定である。
ここには、再審査庁がどのような判断を下すべきかが明文化されている。
特に、「審査請求の裁決は違法または不当だが、元の処分(原処分)は適法である」という複雑なケースが受験生を混乱させる。
結論から言えば、この場合は再審査請求を裁決で棄却(Kikyaku)することになる。
なぜなら、最終的な結論である「処分」自体が正しいのであれば、そのプロセスである審査請求の裁決に多少の不備があっても、結論を覆す理由にはならないからである。
ここで「却下(Kyakka)」と「棄却」を入れ替える問題が頻出する。
執行停止と準用規定:職権行使は認められない

再審査請求においても、執行停止(Shikko Teishi)の制度は準用されている。
しかし、ここで注意が必要なのは再審査庁の立ち位置である。
再審査庁は通常、処分庁でもなければ上級行政庁でもない「第三者的」な行政庁であることが多い。
そのため、行政不服審査法の「いずれでもない審査庁」の規定が適用される。
この場合、審査庁による執行停止は申し立てがある場合に限り可能であり、職権で行うことはできない。
また、処分の効力を停止することはできても、処分の内容を変更したり、その他の措置をとったりすることは禁止されている。
これは国民の権利を守りつつも、行政庁の権限を逸脱しないためのバランス調整である。
- 1再審査請求人に執行停止の申し立て権がある
- 2再審査庁は、裁決庁の意見を聴取しなければならない
- 3職権での執行停止は「不可」
- 4処分の変更などの「その他の措置」も「不可」
実戦演習:過去問から学ぶ「引っかけ」のパターン

過去の出題例(令和2年など)を分析すると、試験委員の意図が見えてくる。
よくある誤りとして、「再審査請求の期間を原処分の日から起算する」というものや、「再審査庁が職権で執行停止できる」といった記述が挙げられる。
これらはすべて、審査請求の一般原則や、上級行政庁が審査庁になる場合のルールとの混同を狙ったものである。
行政不服審査法は記述式での出題がしばらく遠ざかっている。
特に「再調査の請求」や「再審査請求」といった用語を正確に書かせる問題や、64条3項の結論(棄却)を書かせる問題は、いつ出題されてもおかしくない。
漢字の書き間違いも含めて、正確なアウトプットができるようにしておく必要がある。
