米国労働省が発表した8月の雇用統計によれば、非農業部門雇用者数は予想を大きく下回り、過去2ヶ月分の数値も下方修正されました。
就業者数の実質的な減少傾向は2010年以来約15年ぶりの事態であり、これは歴史的に見て景気後退の強力な先行指標となります。
失業率についても4.3%と上昇が続いており、特に立場の弱い若年層や黒人層の失業率悪化が目立ちます。
こうした層の雇用動向は、将来的な全体の失業率上昇を占う先行指標となるため、労働市場の軟化は一過性ではなく、今後さらに深刻化するリスクが高いと言えます。
賃金の伸び悩みとレイオフの増加は、個人消費の冷え込みに直結します。
消費が停滞すれば企業業績が悪化し、さらなる人員削減を招くという悪循環に陥るため、米経済は一段と減速する降参が大きいというのが、現時点での論理的な帰結です。
市場はすでに9月の利下げを100%織り込んでいますが、注目すべきは利下げの「幅」です。
FRBが0.5%以上の大幅な利下げに踏み切る場合、それは当局が経済の深刻な悪化を認めたことを意味し、株式市場にとっては逆にパニック的な売りを誘発する引き金になりかねません。
政治的な動向も見逃せません。

トランプ大統領が次期FRB議長候補として、Kevin Hassett氏、Kevin Warsh氏、Christopher Waller氏の3名を挙げました。
中でも最有力とされるKevin Hassett氏はトランプ氏に従順であり、大幅な利下げを支持する鳩派の姿勢を鮮明にしています。
もしKevin Hassett氏が就任すれば、ドルの信頼性が揺らぎ、急激なドル安・円高が進行するでしょう。
米国株に投資している日本の個人投資家にとって、これは「株安」と「為替差損」というダブルパンチを受けることを意味し、資産が円建てで40%以上目減りするリスクすら孕んでいます。
こうした局面では、米国債ETFであるTLTなどの債券に注目が集まりますが、過度な期待は禁物です。
短期的には金利低下による価格上昇が見込めるものの、将来的なドル安に伴うインフレ再燃や、市場全体の流動性危機による「総売り」の巻き添えを食らう可能性があるからです。
金(GLD)や金鉱株(GDX)についても同様です。
長期的には強気の見通しですが、景気後退の初期段階では、投資家が証拠金維持や生活費確保のために、流動性の高い資産から順に現金化を進めます。
そのため、一時的にはあらゆる優良資産が売られる局面が必ず訪れます。

投資家が取るべき具体的な手順を整理しましょう。
①まずは現在のポートフォリオにおける現金比率を再確認すること。
②次に、特定の資産クラス(特に米国株)に偏りすぎていないか精査し、過度なレバレッジを解消すること。
③そして、パニック的な投げ売りが発生した際に拾えるよう、資金の余裕を確保しておくことです。
世界的な景気拡大サイクルが終焉を迎え、今後は米国一本足打法ではなく、国際分散投資が主役となる時代が2040年頃まで続くと予想されます。
オルカン(全世界株式)であっても、その6割が米国株である以上、今後は米国以外の市場にも目を向ける柔軟な姿勢が重要になります。
結論として、米国株市場が完全に底打ちするのは2026年10月頃になると予測されます。
それまでの期間は、一時的な反発に惑わされることなく、景気後退という「自然の摂理」に対して謙虚に向き合い、資産を守り抜くフェーズであると認識すべきです。


