2024年のノーベル化学賞は、生命の設計図であるタンパク質をめぐる歴史的な難問を「計算科学」と「AI」で突破した3名に贈られました。
タンパク質は20種類のアミノ酸が紐状に繋がったもので、それが複雑に折りたたまれる(フォールディング)ことで特定の機能を持ちます。
この形が決まる仕組みの解明は、生物学における長年の課題でした。
アミノ酸が100個繋がったタンパク質の折りたたみパターンは、実に10の130乗通りという天文学的な数に上ります。
これを計算で解き明かすことは不可能に近いと考えられてきましたが、今回の受賞者たちはその常識を打ち破りました!
まずデヴィッド・ベーカー氏は、独自のソフトウェア「Rosetta」を開発し、タンパク質の構造予測だけでなく、人工的な設計に成功しました。
2003年には、自然界に存在しない全く新しい構造を持つ「Top7」というタンパク質を作り出し、世界を驚かせました。
ベーカー氏の研究の凄みは、0からタンパク質を設計できる点にあります。

特定の病原体に結合するタンパク質や、新しい化学反応を促進する人工酵素など、これまで自然界にはなかった機能を持つ分子を、意図的に設計することが可能になったのです。
これは創薬や環境問題解決への大きな一歩です!
一方で、デミス・ハサビス氏とジョン・ジャンパー氏は、Google DeepMindで培ったAI技術をこの分野に投入しました。
囲碁AI「AlphaGo」で知られる彼らが次に狙いを定めたのが、タンパク質の構造予測だったのです。
彼らは「AlphaFold」というAIモデルを開発しました。
2018年のコンテストで圧倒的な成績を収めたAlphaFoldですが、さらにジャンパー氏が物理学的視点を加えて改良した「AlphaFold2」は、ついに予測精度90%という驚異的な領域に達しました!
この「90%」という数字は、非常にコストと時間のかかる実験によって得られる精度と同等であることを意味します。
かつては一つのタンパク質構造を解明するのに数年を要していましたが、今やAIによって瞬時に、かつ正確に予測できる時代が到来したのです。

AIが物理学賞に続き化学賞でも主役となった2024年は、科学史の転換点と言えるでしょう。
これまでは基礎研究が中心だったAIが、今や人類の生命現象を理解し、制御するための実用的なツールとして認められた証左です。
この技術の応用先は多岐にわたります。
例えば、特定のウイルスに対するワクチンを設計したり、プラスチックを分解する新しい酵素を開発したりすることも現実味を帯びています。
計算科学がもたらす可能性は、私たちの生活を劇的に変える可能性を秘めているのです!
ノーベル賞の選考委員も、AIによる科学的発見の加速を高く評価しました。
ベーカー氏、ハサビス氏、ジャンパー氏の功績は、生命の最小単位であるタンパク質を自在に操る「神の目と手」を人類に与えたと言っても過言ではありません。


