先週末に発表された7月の米雇用統計は、これまでの米国株ブームの前提を根本から覆す衝撃的な内容となりました。
非農業部門雇用者数は予想17万6000人増に対し、結果は11万4000人増と大幅に下振れ、さらに過去2ヶ月分も下方修正されています。
特筆すべきは失業率で、4.3%と4ヶ月連続で上昇しました。
この数値を受けて、元FRB(米連邦準備制度理事会)のエコノミストである Claudia Sahm(クラウディア・サーム)氏が考案した「サームルール」が発動しました。
これは失業率の3ヶ月移動平均が過去12ヶ月の最低値から0.5ポイント上昇した際に景気後退入りと判定する指標であり、過去50年で8回の的中実績を誇ります。
景気後退期における失業率の動きには、下がる時は緩やかですが、上がる時は一気に加速するという特性があります。
失業者が増えれば当然ながら個人の消費能力が失われ、企業業績の悪化、さらにはリストラという負の連鎖を招きます。
過去12回の景気後退局面を振り返ると、S&P 500指数の平均下落率はマイナス31.5%に達しています。

今回の下落も、S&P 500が50ヶ月移動平均線付近の4295ポイント程度まで調整される可能性があり、高値からの下落率は24%に及ぶと予測されます。
日本の投資家にとって、今回の局面が2022年の弱気相場よりも深刻なのは「為替の影響」です。
2022年は日米金利差の拡大によりドル高円安が進んだため、円建てのS&P 500は10%程度の下げで済みました。
しかし今回は日米金利差の縮小に伴う「円高」が同時に進行します。
株安とドル安のダブルパンチを受けることで、円建て資産のパフォーマンスは高値から30%から40%以上も吹き飛ぶ可能性があります。
これは2022年とは比較にならない打撃となるでしょう。
今後の底打ち時期については、過去の統計から天井をつけてから平均15ヶ月後、つまり2025年10月頃になると推測されます。
また、歴史的に3月は相場の転換点になりやすいことから、2025年3月も重要な節目となるでしょう。

それまでは、特に個人投資家に人気の高い SOXL(ディレクション・デイリー・半導体・ブル3倍・ETF)などのレバレッジ型商品には手を出してはいけません。
こうした銘柄は急落局面で資産が90%以上消失するリスクを孕んでいます。
結論として、新NISAなどでのインデックス積立投資は継続しつつも、余剰資金での追加投資については極めて慎重になるべきです。
景気後退を伴う株安は、短期間で終わる調整ではなく、1年から1年半という長期戦になる覚悟が必要です。
現在は「バーゲンセール」と安易に飛びつくのではなく、キャッシュポジションを維持し、本質的な底打ちを確認するまで待機することが、長期的な富を築くための最善策となります。
なお、景気後退の正式な判定は、Nobel経済学賞受賞者らが所属する NBER(全米経済研究所)が事後的に行いますが、その発表は通常半年から1年後になります。
投資家は公式発表を待つのではなく、市場が発するシグナルを敏感に察知し、ポートフォリオを保守的な構成へとシフトさせることが求められています。
AIブームの熱狂に踊らされる時期は終わり、実体経済の冷え込みに備えるべきフェーズに突入したのです。


