世界的な英語運用能力評価試験であるIELTS(アイエルツ)が、日本国内において大きな転換期を迎えています。
これまで主流だったペーパー版試験が2024年内に廃止されることが明らかになりました。
地方会場は6月から順次終了し、東京や大阪の主要会場も8月を最後に、9月からは完全にコンピューター版試験へと一本化されます。
この変更は、長年紙の試験に慣れ親しんできた日本の受験者にとって、極めて大きな壁となることが予想されます。
なぜこれほど急激な移行が進むのでしょうか?その背景には、国際的な試験運用コストの問題があります。
ペーパー版の場合、問題用紙の印刷や厳重な輸送、さらには解答用紙を採点国であるイギリスやオーストラリアへ返送するための膨大な郵送費とリスクが発生しています。
デジタル化によるペーパーレス化は、これらの物理的なコストと漏洩リスクを劇的に削減するための必然的な流れと言えるでしょう。
日本人受験者が直面する最大の課題は「タイピング」です。
リスニング試験では、音声を聞きながら同時にスペルを打ち込む必要があり、ブラインドタッチ(タッチタイピング)ができない受験者は、入力に意識を削られて聞き取りがおろそかになるリスクがあります。
また、ライティング試験においても、手書きであれば無意識に書ける単語も、キーボード操作に慣れていないと大幅に時間をロスしてしまいます。

PC操作の習熟度が、純粋な英語力以上にスコアを左右する懸念があります。
一方で、コンピューター版への移行にはメリットも存在します。
例えば、長文読解(リーディング)では、ハイライト機能を使用して重要な箇所に印を付けることが可能です。
また、自宅受験が可能な「IELTS Online (IELTSオンライン)」であれば、技能試験の合間に休憩を取ることも理論上可能になります。
ただし、試験会場での受験(CD IELTS)とはルールが異なるため、自身の志望校や提出先がオンライン版を認めているか事前の確認が不可欠です。
興味深い事実に、日本のIELTS受験料の「安さ」があります。
現在の受験料は27,500円(税込)ですが、ザンビアやナイジェリア、オーストラリア、カナダなどでは日本円換算で4〜5万円に達する国も珍しくありません。
この価格差から、中国などの近隣諸国から観光を兼ねて日本に受験しに来る「受験ツアー」の需要も依然として高い状態にあります。
価格の優位性は、日本国内での試験提供を維持するための重要な要素となっているようです。
今後の対策として、受験者はまず「PCでの回答プロセス」に慣れる必要があります。

公式の練習問題は限られていますが、画面分割で問題と解答を表示する形式や、PC特有のインターフェースでの操作感を早期に体験しておくべきです。
特に高校生や大学生など、普段フリック入力がメインでキーボードに不慣れな世代は、日常的なタイピング練習がスコアアップの前提条件となります。
手書きの学習から、デジタル上でのアウトプットへの切り替えが求められています。
IELTSは現在、アメリカの大学でも採用校が急増しており、イギリスやオーストラリア、カナダを含む英語圏全域での汎用性は、競合するTOEFL (トフル) を凌駕する勢いを見せています。
また、日本国内の立教大学(Rikkyo University)をはじめとする大学入試でも広く活用されています。
ペーパー試験の廃止はショッキングなニュースですが、デジタル化の流れは不可避であり、この変化を前向きに捉えて準備を進めることが、最短ルートでの目標スコア達成に繋がります。
具体的なPC対策としては、まず「英単語のスペリング」を完璧にすることです。
タイピングミス(タイプミス)は即失点に繋がります。
もりてつ(Moritetsu)氏とひろ(Hiro)氏が監修した『でるフレーズで覚えるIELTS英単語』には、リスニングで頻出するスペリング一覧表も掲載されており、こうした教材を活用して「打てる単語」を増やすことが有効です。
PC移行という変化を、自身のITリテラシーを高める好機と捉えるマインドセットが、現代の受験生には必要不可欠と言えるでしょう。


